ユニコーン
ユニコーン「すばらしい日々」
僕らは離れ離れ
たまにあっても話題が無い
一緒にいたいけれど
とにかく時間が足りない
人がいないとこに行こう
休みがとれたらいつのまにか僕らも
若いつもりが年をとった
暗い話にばっかり
やたら詳しくなったもんだそれぞれ二人忙しく
汗かいて素晴らしい日々だ
力あふれ
全てを捨てて僕は生きてる君は僕を忘れるから
その頃にはすぐに君に会いに行ける懐かしい歌も笑い顔も
すべてを捨てて僕は生きてる
それでも君を思い出せば
そんな時は何もせずに眠る眠る朝も夜も歌いながら
時々はぼんやり考える君は僕を忘れるから
そうすればもうすぐに君に会いに行ける
©奥田民生 1993年発表
追記(2007.10.14)
〈君は僕を忘れるから そうすればもうすぐ君に会いに行ける〉と「僕」はいうけれど、もちろん、「僕」が「君」を忘れないように、「君」も「僕」を忘れたりはしない。「僕」はそのことを知っている。なぜなら、「君」も〈すべてを捨てて〉生きてるひとりに他ならないから。「僕」が〈それでも君を思い出〉しているとき、「君」も「僕」をやっぱりそれでも思い出し、〈そんな時は何もせずに眠〉っているだろう。
だからきっと、「僕」は「君」に永遠に会いに行けない。〈もうすぐ君に会いに行ける〉というのは希望のようであるけれど、「君」が「僕」を忘れるというありえない最悪の状況を仮定することでしか描けない、淋しくておまけに実現されない希望だ。
そういうものはふつう、絶望と呼ばれる。